報酬体系について、よく理解したたけんぞう社長とのぶこ専務は、つなぐくんと報酬以外のアドバイザリーサービス委託契約書(以下、アドバイザリー契約)について説明を受けることになりました。
エピソード②アドバイザリー契約











アドバイザリー契約の主な内容
アドバイザリー契約は、会社によってそれぞれフォーマットが異なります。しかしながら、契約内容は、そこまで大きな違いがありません。そのため、契約書の内容で確認する部分はだいたい同じです。それでは、アドバイザリー契約について、重要な条項を確認していきます。
前文
譲渡側、M&A会社がアドバイザリー契約を締結する旨を記載しています。甲が対象会社なのか、株主なのか、両方なのかを確認する必要はあります。乙は、一般的にM&A事業者となります。ごく稀に依頼している会社ではなく担当者が経営している会社等他の会社になっていることもありますので、十分に注意してください。
目的
アドバイザリー契約を行う目的及び業務内容について記載がされています。ほとんどの契約書が、具体的には以下条文に記載してることが多いです。
本業務の範囲
主に、アドバイザリー業務とは、だれに、何の目的で、何を提供するか、について記載があります。
誰に |
譲受先について、丙と記載されています。譲受先が決まっていれば、具体的な企業名の記載があり、決まっていなければ第三者という記載になっています。 |
何の目的で | 株式譲渡・譲受を含む資本提携、事業譲渡・譲受、第三者割当増資、株式交換、企業合併、資産譲渡・譲受、一部株式譲渡を含む資本業務提携、業務提携等の記載がされていることが多いです。業務提携と記載がされている場合は、株式を売却することがなくても報酬が発生することもありますので注意が必要です。 |
何を提供するか |
具体的な業務内容が記載されています。基本的には、M&Aプロセスに沿って必要なことが流れにそって記載されています。また、アドバイザーは代理ではないため、あくまでアドバイス・助言をすることが役割となります。プロセス上漏れがないか、どのような場合に追加費用が掛かるかを確認することをお勧めします。 例: (1)必要な情報の収集・調査・資料の作成 (2)基本スキームの立案 (3)手続上の助言・打合せのスケジューリング (4)丙との契約締結に向けた事前手続と打合せの立会い・助言 (5)弁護士、公認会計士、税理士、代理人又はアドバイザー等(以下、「専門家」と総称する。)の依頼・紹介 (6)必要書類ひな型の提示・合意内容確定の助言 (7)甲と丙との間で締結される一切の契約締結に関する助言 (8)デューディリジェンスの立会い・助言 (9)その他進捗状況に応じた適宜の助言 |
室長コメント
専任、非専任という言葉を必ず確認してください。アドバイザーは余程の理由がない限り、専任契約を締結することが一般的です。専任の場合、自ら候補先を探してきたとしても報酬が発生します。そのため、自ら候補先を探してきた場合等の条件確認を必ず行ってください。
契約期間
アドバイザリー契約の契約期間が記載されています。解約の場合は何か月前に伝える必要があるか、契約期間満了後は自動更新されるか等の確認が必要となります。ごく稀に、更新時に手数料が掛かることがあります。契約期間だと侮らずにしっかりと確認しましょう!
報酬及び支払方法
アドバイザリー契約に対して、いつ、いくら支払うかについて記載があります。
いつ | 本契約締結時、基本合意締結時、最終譲渡契約時、クロージングもしくは譲渡対価決済時等具体的なタイミングについて記載があります。特に、最終契約締結時なのかクロージングもしくは決済時なのかは必ず確認してください。最終契約締結時に支払う場合には、最終契約締結からクロージングもしくは決済までの期間が空くため、万が一の事態が発生する可能性もございます。 |
いくら | 具体的な報酬体系については、第8話アドバイザリーサービス業務委託契約書①をご確認ください。 |
室長コメント
報酬に関しては、契約上一度支払った報酬は返還されないことになっています。そのため、リスクにならないように支払うタイミングをしっかり確認・交渉しておく必要があります。
実費の負担
アドバイザーが活動していく中で、必要となる経費について記載があります。一般的には、譲渡側の承諾を得たものだけアドバイザーが請求できるといった条文になっていることが多いと思います。
室長コメント
実費が必要となるのは、遠方へ行く際の交通費及び宿泊費、デューデリジェンス時に専門家が必要な場合、契約書のリーガルチェック等になります。私自身は、とても遠方で飛行機移動が伴う場合の交通費、専門家へ依頼する場合の必要報酬は承諾を得ていただくように事前にお伝えしています
禁止事項
アドバイザリー契約において、行ってはいけない禁止事項について記載されています。私が重要だと思う要点は3つあります。
直接交渉 | 丙や丙側のアドバイザー、関係者へ直接コンタクトを取ることを禁じています。 |
情報開示 | 専門家を除く第三者への情報開示を禁止する条項です。契約書によっては別途秘密保持の条文を設けていることが多いです。 |
第三者との契約締結 | 専任契約をしている場合、アドバイザリー契約を第三者と締結することを禁止する条項です。 |
室長コメント
直接交渉禁止について、アドバイザーを通して交渉するよりも直接行った方が良いと思われる方もいると思いますが、直接交渉すると交渉不成立になることがとても多いです。不成立になる主な理由は、両社落としどころを見つけることが出来なくなるためです。その点で、アドバイザーは交渉の匙加減、代替案を熟知していますので信頼して任せることをお勧めします
直接取引のみなし成立
アドバイザーが紹介した相手と直接交渉を行い成功した場合には、アドバイザーが交渉していなくても成功報酬をお支払いしなければならないという条項です。紹介から2年以内というのが一般的になります。
室長コメント
アドバイザーへの報酬を支払いたくないため、譲渡側譲受側で結託して一旦交渉を破談させ、数ヶ月後アドバイザーなしで直接成約させること防ぐために用いられています。この条項に抵触したケースを同業者よりごくたまに聞くことはあります。
その他
その他の条項について記載いたします。
業務の処理方法 | 契約書の内容とおり業務処理していくこと、契約書に記載がないことは協議して決めていくという条文です。 |
業務内容の変更 | 業務内容に変更があった場合には、協議の上で変更しましょうという条文です。 |
損害賠償 | 損害賠償請求できるという条文です。報酬を上限とすることが多いと思います。 |
契約解除 | 業務遂行が出来ないような状態になった場合、契約解除できる旨が記載されています。 |
守秘義務 | 一般的な秘密保持契約書に記載されている内容になります。 |
権利譲渡 | 契約書の権利を譲渡出来ないことが記載されています。 |
反社会的勢力等 | 反社会的勢力等でないことを誓約する内容が記載されています。 |
裁判管轄 | 何か問題あれば、指定する裁判所で解決しましょうという内容になります。 |
その他 | その他、契約書に記載されていないことが発生したら誠実協議しましょうという条文になります。 |
室長コメント
甲、乙間で距離がある場合には、「本契約に関し、甲乙間で紛争が生じた場合には、被告の本社所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。」とすることが多いです









無事にアドバイザリー契約を締結できたけんぞう社長とのぶこ専務は安心して帰りました。次のお話は、提案書をつなぐくんとたすきちゃんが作成していきます。