1.中小企業M&Aはアドバイザーとの信頼関係が重要
中小企業のM&Aにおいて、最も重要なことは『信頼』です。譲渡を希望される企業様、譲受を希望される企業様、そして、M&A仲介会社やアドバイザリー会社がお互いを信頼して進めなければ、M&Aを成立させることはとても困難です。そのため、信頼できるM&A仲介会社やアドバイザリー会社を選択する必要があります。
M&A会社の選び方
M&Aをご支援する会社は、大きく3種類に分けることができます。具体的には、①譲渡側と譲受側を仲介にて支援する会社、②譲渡側、譲受側どちらか一方を支援する会社、①と②のどちらも行う会社となります。
①M&A仲介会社 | ②M&Aアドバイザリー会社 | |
候補先が見つかるスピード | 〇 | 〇 |
候補先の確度の高さ | ◎ | 〇 |
交渉のスピード | ◎ | 〇 |
交渉の公平性 | △ | ◎ |
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、自社内にて譲渡側と譲受側をマッチングさせます。双方の直接代理となることから、双方への理解が深くなり、ご提案から成約までの確率が比較的高くなります。また、交渉フェーズに入った後も、両社の希望と意向を理解し直接アドバイスできるため、比較的まとまりやすい傾向にあります。一方で、利益相反が発生しやすくなるため、どちらか一方の利益を最大化させることでもう片方が不利益を被ったり、曖昧な条件のままアドバイザーを信じて早期成約してM&A後トラブルになるといったリスクもあります。こういったリスクは、各M&A会社の企業文化やアドバイザーのスキル・経験によって大きく異なります。
M&Aアドバイザリー会社
M&Aアドバイザリー会社は、譲渡側・譲受側どちらか一方のアドバイザーとなり、もう片方のアドバイザーは同業他社が行います。片側の利益最大化に集中できるメリットがある一方で譲渡側アドバイザー、譲受側アドバイザーを挟んで交渉しているため、本来伝えるべきことが伝わらず、時間が掛かってしまうケースもございます。そのため、双方のアドバイザーのスキル・経験・関係性が重要になります。
室長のオススメ
室長は、M&A仲介業務及びアドバイザー業務をいずれも行ってくれる会社をお勧めします。初期段階は、M&A仲介手法でスピーディに確度の高い候補先を見つけることに集中し、それでも見つからない場合には、他のM&Aアドバイザー会社にも協力を得ながら幅広く候補先を探すアドバイザリー手法を行うことが最善だと考えます。この場合に、一番重要となってくるのがアドバイザーとの信頼関係です。前述したとおり、アドバイザー次第で仲介業務では利益相反問題、アドバイザリー業務ではスピードや質の問題が発生します。そのため、アドバイザーを選択する際には、会社のブランド力で判断するのではなく、このアドバイザーに任せたいかどうかで判断することをお勧めします。譲渡側・譲受側いずれもオーナー、家族、従業員、顧客にとって重要な選択となりますので、慎重にご判断してください。
2.相手方との信頼関係
中小企業のM&Aを成立させるためには、M&A会社への信頼はもちろんのこと相手方との信頼関係がとても重要になります。信頼できない会社へ譲渡はしませんし、信頼できない会社を譲受する方もいないでしょう。この信頼関係を維持するために重要なことをお伝えします。
譲渡側企業にとって、事前準備がとても重要!!
信頼関係を維持するために重要なことは、譲受側が不安・不審に陥らないように誠実にご対応することです。そのため、ご面談時のコミュニケーションはもちろんのこと、譲渡の決断と共に事前準備をしっかりとしておくことがとても重要です。今回は、組織、人財、資産、負債、株式、取引先、事業計画の7つ要素に分けて事前準備ポイントの一部をお伝えします。
組織
- 組織構造を見直す(分かりにくい場合は、事業部の統廃合を検討する)
- 組織の役割を明確化する(業務内容が重複している場合は整理する)
人財
- オーナー不在でも事業活動が継続できるように二番手を選任・育成する
- 労使間のトラブルがある場合には解決する
- 就業規則、給与規定、賞与規定、退職金規定等を整備する
資産
- 個人的な資産や事業活動に必要ない資産を整理・清算する
- 役員に対する貸付金等内部取引がある場合には出来るだけ清算する
- 不良債権、棚卸資産等がある場合には、清算もしくは整理する
負債
- 役員からの借入金等内部取引がある場合には出来るだけ清算する
- 金融債務がある場合には、借入状況が分かるように整理する
株式
- 相続対策等で株式が分散している場合には出来るだけ集約する
- 株券発行会社で株券を発行していない場合、株券不発行会社の手続きをする
取引先
- オーナーが直接担当している取引先を従業員への引継ぐ
- 親族間取引がある場合、取引内容の明確化し基本契約書等を作成する
事業計画
- 自社の強み・弱み、事業拡大の機会・脅威を明確にする
- 今後、5年間の成長戦略を策定し、事業計画書を作成する
室長コメント
事前準備が出来ている企業様と出来ていない企業様を比べると、成約率とスピードが圧倒的に違います!特に、社長の属人性が業務内容、取引先との関係、財務上に強く出ていると譲受側としては事業承継が出来るか不安になります。そのため、事業承継後も事業継続できる事前準備は最も重要になります。
譲受側企業にとっても、事前準備がとても重要!!
信頼関係を維持するために重要なことは、譲渡側が安心して譲渡できるように誠実にご対応することです。そのため、成長戦略の手法としてM&Aを選択した時点で承継後の事前準備をしっかりとしておくことがとても重要です。今回は、方針、組織、人財、資金の4つ要素に分けて事前準備ポイントの一部をお伝えします。
方針
- M&Aの目的を明確にする
- M&A対象となる業種、規模、エリア、各条件を明確にする
- 検討に迷った場合の判断基準となるKPIを作成する
組織
- 会社全体へ成長戦略としてM&Aを行っていくことを伝える
- M&A実行するチームをつくる
- 承継後の経営管理や会社間を繋げる部門をつくる
人財
- 従業員全員に経営を意識させて、経営を学ぶ機会を提供する
- 承継後会社の代表となれる人財を選定・育成しておく
資金
- 譲受資金を準備しておく(手持ち資金、金融機関借入金、第三者割当増資等)
- M&A予算を関係者へ明確化しておく
室長コメント
成長戦略としてM&Aを掲げているものの、実際にM&Aが出来ていない会社は、ターゲットが曖昧、譲受後に代表となる人財がいない等事前準備の出来ていない企業が多いです。一方で、M&Aを活用して事業規模拡大している会社は、この点が明確で会社全体として受け入れ態勢が出来ている印象があります