譲渡側ストーリー ストーリー

第8話 アドバイザリーサービス委託契約書①

企業価値評価に納得したけんぞう社長とのぶこ専務は、つなぐくんとアドバイザリーサービス委託契約書(以下、アドバイザリー契約)を締結することになりました。

 

エピソード①アドバイザリーサービス契約

 

つなぐ君
こちらがアドバイザリーサービス委託契約書となります
確認をさせてもらう前に、特に重要な部分を説明してくれ
けんぞう社長
つなぐ君
そうですね、特に重要なのは、「委託内容」「期間」「報酬」「専任」というキーワードです
報酬について説明してくれるかな
けんぞう社長
税理士先生は、ピーマン方式?って言っていたわね
のぶこ専務
いやいや、シーマン方式だろ
けんぞう社長
つなぐ君
レーマン方式ですよ(笑)
シーマンって懐かしいな、子供達が遊んでいたな
けんぞう社長
懐かしいわね
のぶこ専務
つなぐ君
あのおっさん顔が愛くるしいんですよね
あれ、シーマンを知っているっておいくつかしら?
のぶこ専務
つなぐ君
今年38歳になります
随分、若く見えるな、息子と同い年とは思えないな
けんぞう社長
つなぐ君
よく言われます、、、良いのか良くないのか、、、
つなぐ君
それは、さておきご説明していきましょう

M&A報酬の一般的な考え方

はじめに、M&Aの報酬は不動産業界のように法的な定めがございません。一方で、法的な計算方法ではないものの、多くのM&A会社は「レーマン方式」という計算方法を採用していることが多いです。その他、着手金、中間金、成功報酬、最低報酬というキーワードで、各社独自の考え方を持ち、お客様とご契約をしています。それでは、詳しく解説をしていきましょう!

 

報酬種類と支払い時期

M&Aの報酬には、主に4つ種類があります。全て採用している会社もあれば、1種類だけを採用している場合もあります。これらを支払時期順でみていきましょう。

 

着手金(アドバイザリー契約締結時)

アドバイザリー契約締結時に支払います。こちらについては、万が一M&Aが成立せず、契約解約となった場合でも返金されることはありません。一般的には、50~200万円くらいが多く、昨今では他社との価格優位性を出すために着手期無しという会社も多くなってきています

 

中間金(基本合意締結時)

意向表明書提出時、基本合意締結時、デューデリジェンス実施時のように、相手方の意思決定がされた場合に支払います。こちらについても、その後M&Aが成立せず、契約解約となった場合でも返金されることはありません。一般的には、成功報酬の10%~30%くらいになります。こちらを採用している会社は、着手金を取らずに、中間金をとるケースが多いです。

 

成功報酬(最終契約締結時)

株式譲渡契約や事業譲渡契約等最終締結時に支払います。こちらについても、M&A成立後、相手方と契約解除となった場合でも返金されることはありません。9割近い会社が「レーマン方式」という計算式を採用しています。(こちらは、次に詳しく説明していきます)

 

リテーナーフィー(アドバイザリー契約締結後毎月)

一定期間業務料に応じて支払う顧問料となります。着手金や中間金を取らずにリテーナーフィーを請求する会社もあります。例えば、本取引を進めるにあたり業務料が膨大な場合や最終契約が業務契約等報酬に換算しずらい場合等があった場合に発生します。中小企業M&Aにおいては、少ないケースだと思います。

 

室長コメント

ここ数年、中小企業においては大手M&A会社の報酬が高すぎるということで、顧客や紹介者から高すぎる報酬は嫌煙されるケースが多くなりました。それらの顧客の要望に応えるべく、報酬を成功報酬のみにする等価格設定で差別化している会社が急増しています。安かろう悪かろうではありませんが、価格だけに左右されずにアドバイザーを見て判断するように強くお勧めします

 

レーマン方式

レーマン方式とは、譲渡契約時の契約金額や移動する資産額等決められた係数に以下の料率を掛けて計算する方法です。

5億円以下 ○○○○○×5%
5億円超~10億円以下 ○○○○○×4%
10億円超~50億円以下 ○○○○○×3%
50億円超~100億円以下 ○○○○○×2%

 

■参考例:譲渡契約金額2億円、譲渡時移動資産4億円(譲渡契約金額2億円+負債2億円)の会社の場合

  契約金額ベース 移動総資産ベース
計算式 2億円×5% 4億円×5%
報酬 1,000万円 2,000万円

 

掛ける係数が違うだけで、1,000万円の差がつきました。この結果から分かるように、何に料率を掛けるかがとても重要です。その何によっては金額が大きく変わります。

 

各社最低報酬という設定を必ず設けております。一般的には、300万円~2,000万円となっています。これは、レーマン方式で掛け算をした際に、例え100万円という計算になっても、最低でもこれはだけはご報酬としていただきますという意味になります。

 

室長コメント

レーマン方式の料率を1%低く設定している会社も多くなってきました。

 

会社別参考事例

報酬の取り方が違う会社をそれぞれ比較してみましょう!

 

■参考事例:譲渡契約金額2億円 活動期間6ヵ月 

着手金(着)、中間金(中)、成功報酬(成)、リテナー(リ)、単位:万円

  着+中+成 着+成 中+成 リ+成
100 100      
200   200    
800 1,000 800 1,000 1,000
        120
合計 1,100 1,100 1,000 1,000 1,120

 

報酬の取り方が違っていても、とても大きな差があるわけではないことはご理解いただけたと思います。大事なのは、成功報酬部分でレーマン方式の対象となる部分が譲渡価格なのか移動資産等何になるかになります

 

室長コメント

成功報酬のみの方が、一番リスクが少ないと思われると思います。一方で、M&Aプロセスを行っていく中で本来の目的を見失い決意がぶれてしまうことがあります。着手金や中間金を支払っていると、自分自身の中での決意の表れであり、譲渡を取りやめるにしても支払った分が返ってこないため、安易に間違った方向に進みにくいという特徴があります

 

 

つなぐ君
まずは、報酬についてご説明をしました
成功報酬だけだとありがたいわね
のぶこ専務
私は決意の表れとして着手金を払ってよいと思うぞ
けんぞう社長
つなぐ君
そうですね、私達は基本着手金はいただいています
つなぐ君
M&Aプロセスはお互い真剣に取り組み、時間を使わないといけません
お互いの本気の表れということね
のぶこ専務
私は簡単にはぶれないけどな
けんぞう社長
そうであれば、こんなに苦労しませんよ(笑)
のぶこ専務

 

さて、次回は、報酬以外にアドバイザリー業務委託契約書についてご説明をします

 

 

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  • この記事を書いた人

室長

大手メーカーにて美容・システム関連の営業を10年経験、同社のM&A事業会社立上げを行い、中小企業を対象とした事業承継及びM&Aアドバイザーを行ってきました。これまでに300社以上のご相談と数十件のM&A成約をご支援しております。また、経済産業省管轄事業引継ぎ支援センターのマッチングコーディネーターとして、事業承継のご支援もさせていただいております。加えて、ベンチャー企業のCFOとして財務・戦略策定等実業家としても活動をしております。

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